「なぜ開業しようと思ったのですか?」 そう聞かれることがよくあります。 もちろん理由はいくつかあるわけですが、一番大きなきっかけは、前職で多くの生徒を指導する中で感じた、ある「違和感」でした。 一つ象徴的な例を取り上げます。 中学校2年生で図形の単元を学ぶわけですが、そこで登場する「図形の証明問題」になると途端に手が止まってしまう子がいます。 最初は「図形の性質をまだ覚えられていないのかな?」と私は思っていました。ところが、よくよくその子に聞いてみると、「平行線の同位角・錯角」、「二等辺三角形の性質」、「三角形の合同条件」など、個々の図形の性質はある程度頭に入っている様子でした。 それなのに、いざ「〇〇であることを証明しなさい」と言われた瞬間に、何をしたらよいのか分からず何も書けなくなってしまう。そんな状態でした。 その時私は、「この子は知識そのものの習得ではなく、それらを適切につなぎ合わせて論理を組み立てることに躓いているんだな」と気が付きました。 そこで私は、生徒にこんなアドバイスをしました。 「図形の証明は、推理小説と同じなんだよ。」 推理小説には、最初から「犯人」がいます。でも、読者は証拠を一つずつ集めながら、その犯人にたどり着きます。 証明問題も同じです。 証明問題の場合は「何を証明するのか」という結論があります。 まずは、その結論を言うための「決定的な証拠」は何かを考える。そして、その決定的な証拠を掴むために、問題文に書かれている条件やそこからわかる図形の性質という「手掛かり」を集めながら、一歩ずつ「決定的な証拠」へ近づいていき、その証拠をもって結論をバチっと言う。これが大まかな証明問題の流れです。 「結論から逆算して、必要な情報を集める。」 これこそが証明問題の考え方なのです。 この話をすると、生徒の目の色が変わります。 それまで何を書けばよいか分からず止まっていた手が動き始めます。 「なるほど~こう考えればいいんだ!」 「証明って、意外と楽しいかもしれない!」 そんな明るい表情になっていく生徒の表情が忘れられません。 これはあくまで一例にすぎませんが、結局のところ、生徒に必要なのは、単純に知識を増やしていくことではなく、知識と知識を結び付ける「考え方」なのだ。そう感じました。 公式を覚えるだけでは、応用問題には対応できません。 「なぜそうなるのか。」 「どう考えればいいのか。」 そこを理解できたとき、初めて自分の力で問題を解けるようになります。 そして、自分の力で問題を解けるようになったとき、それは子供たちにとって大きな成功体験となり、勉強そのものが楽しく思えてくる大きなきっかけになるに違いないと感じました。 このような体験を一人でも多くの子供たちに提供したい。そういう思いで、私はAstraを開業しました。 私がつくりたかったのは、問題の解き方をたくさん教える塾ではなく、「考え方」を教える塾です。 Astraという名前には、「自らの力で未来を切り拓いてほしい」という願いを込めています。その第一歩として、これからも「なぜそうなる?」を大切にした授業を、一人ひとりの生徒と一緒につくっていきたいと思います。